「武蔵野の古社風景」

<平成16年1月記>

目次・その1
松陰神社」/「豪徳寺」/「世田谷八幡宮
目次・その2
「大宮八幡宮」/「武蔵野八幡宮」/「井草八幡宮」/「東伏見稲荷神社」


「松陰神社」      
(府社・東京都世田谷区若林鎮座)

祭神:
吉田松陰公(吉田寅次郎藤原矩方命)

由緒
もともと当地は「大夫山(長州山)」と呼称され、長州藩の持地であった。
吉田松陰(1830−59)は幕末の勤王家。名は矩方。通称は寅次郎。号が松陰。
長州萩藩士の杉常道の次男として産まれ、叔父の吉田家の養子となり山家流兵法の家学を継いだ。藩主に才能を認められ各地を歴遊。安政元年に密航を企てるも失敗。翌年に謹愼の身ながら「松下村塾」を開講し近代日本の礎となる。安政五年にいわゆる「安政の大獄」に連坐し小塚原刑場にて処刑された。

吉田松陰の遺骸は文久3年(1863)に高杉伊藤らによって小塚原回向院から現地に改葬された。
明治15年(1882)に旧藩主毛利元徳をはじめ門人らが集まり、墓畔にやしろを建立。
現在の社殿は松陰没後50年祭を祈念して昭和2年に造営されたもの。

松陰神社
松陰神社正面
松陰神社
境内
松陰神社
復元松下村塾(もとは山口県。こちらは復元)
松陰神社
松陰墓入口
松陰神社
吉田松陰墓
松陰神社
桂太郎墓

なんとなく神社にいきたくなるのは私の癖。とくに目的も定めずに、まずは松陰神社に行こうかな、と思って東急世田谷線に乗車。松陰神社前から北に300メートルほど歩いたところに鎮座。
思えば、久し振りの神社探訪(それでも一ヶ月ぶり)なので、微妙にワクワクしている。参道は開放的で、青空が眩しかった。私は吉田松陰に対して多くを知らない。もともとが東北の人間ゆえか、長州藩自体に対してイメージが湧かない。それでも吉田松陰の存在は大きい。静かに佇む境内。
社務所は定休日だった。この表記もどうかと思うが、すくなくとも二月のお休み日として今日が該当していた。あまりにも静かすぎる境内は若い母子のほほえましい参拝風景意外に動くものがなかった。

松陰の墓を詣でる。もっとも墓前にて手をあわせてみるだけではあるが。境内の隣、墓地の隣に、もう一区画ある。そこをすすむと「桂太郎墓」に到着した。近代日本国の最大の危機であった日露戦争を首相として指揮した桂太郎は大正2年10月に66歳で急死し遺言により敬慕していた松陰の墓域隣に葬られた。

ことしは2004年。日露開戦は1904年。つまりあの時から100年の年月が経つ。近代日本を導いた男達を思う。ちょうど「坂の上の雲」を読みながらの私はここで墓があるという予備知識もなしに唐突に桂太郎に出逢ったことを驚く。

松陰神社から東に1キロ弱ほどあるくと「豪徳寺」がある。別に用事があるわけではないが、この寺院は彦根井伊家の菩提寺。不思議な因縁に導かれるかのように私は脚を進める。


「豪徳寺」     
(東京都世田谷区豪徳寺鎮座)

豪徳寺は世田谷城主吉良政忠が文明12年(1480)になくなった伯母の菩提の為に建立したという弘徳寺を前身とする。
寛永10年(1633)に彦根藩世田谷領が成立すると井伊家の菩提寺となり、藩主井伊直孝の法号により豪徳寺と改称。仏殿等は井伊直孝の娘掃雲院によって延宝5年(1677年)に整えられた。
境内には井伊直孝以降の代々の墓所があり、桜田門にて死した井伊直弼の墓もある。

豪徳寺
豪徳寺仏殿(1677年)
豪徳寺
井伊家歴代の墓(手前が井伊直弼墓)
豪徳寺
豪徳寺梵鐘
豪徳寺
豪徳寺正面

松陰神社から世田谷八幡にむかう道すがらに豪徳寺がある。みちすがらにあるのだから、なんとなくではあるが寄り道をしておく。吉田松陰の墓を詣でた跡に井伊直弼の墓にいくというバカバカしいまでの因縁を抱きつつ。


「世田谷八幡宮」     
(世田谷区宮坂)

祭神
応神天皇・仲哀天皇・神功皇后

由緒
寛治五年(1091年)時の「後三年の役」の帰途に、源義家がこの宮の坂の地で豪雨に会い天気快復を待つために滞在。後三年の役での戦勝は、源氏の氏神たる八幡大神の御加護によるものとし、豊前宇佐八幡をこの地に勧進したことにはじまるという。

世田谷八幡
正面
世田谷八幡
境内参道
世田谷八幡
拝殿
世田谷八幡
拝殿

東急世田谷線「宮ノ下」駅のすぐ近く。わたしはこの神社を知っていたわけではないが、松陰神社付近の地図を眺めていたら、宮坂という地名に気づき、世田谷八幡をしった、というわけ。
落ち着いた境内には「相撲場」がある。台地の裾野に巧みに相撲場の客席が配され、参道を登ると台地上に神社が鎮座している。
静かな時間が流れる境内は、空間の広がりを感じさせる。なんか心が伸び伸びとする気配。こんな気配が東京のなかでも身近にあるのがうれしい。

続いて世田谷線で北上して京王線下高井戸までいく。次は「大宮八幡宮」に向かおうと思う。


<参考文献>
神社由緒書き
案内看板
東京都神社庁サイト<http://www.tokyo-jinjacho.or.jp/>



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